民泊の基礎知識

2021年08月24日

初めて民泊オーナーを目指す方のために、民泊とは何か、どのような法律があって、どんな点に注意したらよいのかなど、民泊の基礎知識をご紹介します。

目次

民泊とは

民泊の名称に関して、特に法律上の定義はありませんが、一般的には戸建住宅やマンションなど、住宅の全部または一部を活用して提供する宿泊サービスのことを指します。

たとえば賃貸マンションのオーナーが、空室となっている部屋を旅行者のために提供するのも民泊ですし、一軒家を購入し、そこを宿泊施設として利用する場合も民泊にあたります。

民泊に関する法律

旅館業法

日本国内では長らく宿泊業を行う場合は、旅館業法に基づき営業許可を得て開業する。という方法が一般的でした。

このような状況の中、民泊という概念が生まれ、戸建ての一軒家やマンションの1室を貸し出して収益を得るというビジネスが増加しました。

しかしながら、消防法、建築基準法、各自治体の独自ルールにより細かい規則が定められ、戸建ての一軒家やマンションの1室での営業許可の取得は困難でした。

そのため、多くの民泊は無許可で営業を開始し、自治体が把握できない宿泊施設、いわゆる「ヤミ民泊」が多数発生する。という状況となりました。

この課題を解決するため、後述する民泊新法が誕生しましたが、民泊新法は180日しか営業できないという非常に中途半端な法律になってしまいました。

現在では、民泊新法の誕生を受け、各自治体で規制が緩和され始め、戸建ての一軒家やマンションの1室で旅館業法の許可を得ることも可能です。

旅館業法の許可を得ると、365日の営業が可能になります。もっとも収益性が高いため、投資目的の方が最初に考えるべき選択肢は、旅館業法の取得です。

民泊新法(住宅宿泊事業法)

2018年6月15日に、民泊新法と呼ばれる法律ができました。

この法律ができるまでは、民泊に関する法律がありませんでしたので、民泊の急増とともに、安全面・衛生面の不安や、近隣住民との騒音・ゴミ出しトラブルなど、民泊をめぐるさまざまな問題が指摘され始めました。

そこで、これらの問題を解決するために施行されたのが、民泊新法でした。
民泊新法ができたことによって、民泊運営者は「住宅宿泊事業者」として届出をする義務が生まれ、一定のルールのもとで民泊を営業しなければならなくなったという経緯があります。

ただし、民泊新法によって届出をした民泊は、年間180日しか営業することができません
民泊新法は旅館業法と比較すると、届出の審査は通りやすいというメリットはあります。

しかしながら、民泊の180日ルールを守って営業する場合、主に文化交流や休眠地の活用といったことを目的とせざるを得ず、利益を優先する場合、投資回収できる営業エリアは非常に限られます。
そのため、投資目的のオーナー様の場合は、旅館業法に基づく営業の許可を取得した方がいいでしょう。

民泊ガイドライン

国土交通省では、民泊新法の解釈について、詳しいガイドラインを出しています。
ガイドラインには、民泊を運営できる住宅がどんな住宅か、どのようにして届出を提出したらいいか、宿泊事業を行う上でどんなことに留意したら良いかといったことが、具体的に記載されています。

たとえば衛生面や安全面の確保が必要なことや、外国人に対する特別な配慮が必要なこと、周辺住民への対応の重要性といったことも、細かく書かれてあります。
民泊のオーナーとなる人は、必ず目を通しておきましょう。

特区民泊

地域によっては国家戦略特区となっていて、「民泊条例」が施行されている自治体もあります。
※沖縄県内には存在しません。

もっとも有名なのは大阪市の制度で、旅館業法に基づく営業の許可より大幅に簡易な手続きのわりに、365日営業ができるというもので、大阪市で民泊件数が異常に増えた一因です。2021年現在バブルは崩壊しています。
なお、大阪市以外の特区では収益上大きなメリットは感じません。営業日数や営業エリア、営業の条件にいくつかの記載があるためです。

したがって、大阪市で民泊を行う場合は特区民泊がある
もし自分がやりたいエリアに民泊条例がある場合は、利用方法を一考してみる。このくらいの理解で押さえておけば問題ありません。

民泊申請方法

民泊の申請方法は、「民泊新法(住宅宿泊事業者)」「旅館業法(簡易宿所営業)」「特区民泊」のそれぞれで、やりかたが違います。

民泊新法の住宅宿泊事業者は届出制なので、民泊制度運営システムを通して行政機関に必要書類を提出すると、審査の上で結果が通知されるという流れになっています。

旅館業法の簡易宿所営業については、営業許可を得るために、自治体の保健所に申請をする必要があります。
申請の流れは民泊新法よりも面倒で、まずは事前相談を行い、建築基準法や消防法への適合状況、マンション管理規約の確認などが行われます。
その上で必要書類を提出し、立ち入り検査を経て営業許可となります。

特区民泊の申請をする場合は、保健所や消防署への事前相談、近隣住民への周知文書の作成を行い、管轄の自治体に必要書類を提出。
書類審査と立ち入り検査が行われた上で、認定書の交付となります。
旅館業と比較すると簡易な手順ですが、市区町村によって対応スピードは異なります。

民泊可能な物件とは?

設備要件

では、民泊を経営できる物件とは、いったいどんな物件なのでしょうか?まず、設備上の要件としては、「台所」「浴室」「トイレ」「洗面設備」が必須です。
宿泊する人数を何人にするかによって管轄の自治体が個別に判断をして必要な数が決定されます。

浴室ではなく、シャワーでも大丈夫です。

民泊を始める前に注意すべき点は?

ゲストのための安全対策

民泊を始めるにあたっては、気を付けなければならない点がいくつかあります。
まずとても重要なのが、ゲストの安全のための対策です。

防犯対策

不審な人物が民泊内に侵入しないように、「防犯カメラ」を設置して確認することが大切です。
旅館業法の場合はほとんどの自治体で義務です。住宅宿泊事業法の場合は必須ではありません。
ゲストの身の安全を守るのはもちろんのこと、民泊内に置いてある置物など、オーナーの所有物が盗まれるのを防ぐこともできます。

また、鍵はスマホの操作によってドアの開け閉めができる、「スマートロック」がおすすめです。
普通の鍵のように受け渡しをする必要がないので、鍵を紛失する心配もなく、ゲストが鍵を複製して滞在後に侵入する危険も回避できます。

ケガ・病気の対応

ゲストが滞在中に軽い傷を負ったり、打ち身や虫に刺されたりしたときのために、近隣のドラッグストアや病院などの案内を用意しましょう。
また台風や自然災害が想定される場合は、その対処法を用意しましょう。
外国人のゲストを想定する場合は、各大使館への連絡先を用意するのもよいでしょう。

防災対策

民泊は消防法によって、消防設備の設置が義務付けられています。
必要な設備は、施設によって違います。

民泊施設の条件によっては、「自動火災報知機」や「誘導灯」「消化器」「スプリンクラー」などが必要になるケースもあります。

盗難対策

ゲストと家主が同居型で行う場合や、複数のゲストが共有スペースを使う場合は、盗難のための防止策はとても重要です。
ゲストだけでなく、オーナーが貴重品を盗まれる場合もあります。
室内には「金庫」などを設置し、入浴中や外出時でも盗難の被害を減らす努力を行いましょう。

また、日用品やドライヤー、Wi-Fiといった備品が盗難や破損に遭うこともあります。
その際に対応できるよう、「民泊専用の保険」には必ず入ることを推奨します。

近隣トラブル

民泊を運営する上で最も気を使うのが、ゲストによる「騒音」「ゴミ」の問題です。
特に海外からの旅行者の場合、生活習慣が違うために大声で騒いだり、ゴミの不法投棄をしたりすることもあり、近隣トラブルに発展するケースが少なくありません。

そのようなことにならないように、近隣の方々にあらかじめ理解を促すことはもちろん、民泊の利用ルールを外国語でも表記することも大切です。
防犯カメラを設置しておくことで、抑止できる場合もあります。

【まとめ】

民泊に関する基礎的な情報をご紹介しました。
民泊の申請には「民泊新法」「旅館業法」「特区民泊」の3つのパターンがあり、投資目的のオーナー様は旅館業法や特区民泊に申請することになりますが、申請作業はかなり面倒です。

申請手続きの手間を省きたい方や、さまざまなトラブルのリスクを回避して民泊を経営したい方は、やはり運営をプロに任せた方が安心確実です。
民泊の運営代行は、実績豊かなオールステイにお任せください。